前号に引き続き谷塚さんのインタビュー後編をお送りします。「あまり堅苦しいスポーツ法学だ何だというよりも、実際に現場に行って現場のスポーツクラブは何に困っているのかっていうのを常に考えながら仕事をしている」という谷塚さんに自身の仕事や行政書士から見たスポーツについて話していただきました。
≫≫ 現場の状況
今、「文科省が総合型地域スポーツクラブを作りましょう。2010年くらいまでには各市町村に最低1個は作りなさい」って言って、すごいわんさかやってるんですけど、現場レベルっていうことではまだまだぜんぜん追いついてないんですよ。一応指定クラブみたいな感じで、東京だったら区が指定して、あなた達は何年後に総合型地域スポーツクラブのモデル例になりなさいって指定されているクラブにもかかわらず、まだ意識が甘くて。
例えばNPO法人化するっていうことはこうなんですよって喋る機会とかあるんですけど、いざこういう義務があって、こういう権利が発生してって喋ると、そんなに面倒くさいんだったらやりたくないとか、というが現状なんです。やっぱりまだまだアマチュアスポーツに関しては成熟度っていうのが全然なくて、そこも1から契約書って何なのっていうところからやらなくちゃいけないって思いますし。あとプロスポーツでも、現場で実際に契約書作ってる人間に契約書見せてもらいましたが、前からあったお粗末な契約書をそのままずっと使ってますとかっていうのが現状なんで。そこのところはやっぱり1から直していかなければならないのかなという気はしますね。
スポーツNPOなんか簡単にできてしまうから、やっちゃおうっていうところが多いんですけど、実情としてはかなり困っている所が多いし、マネージャーも知識がないから迷走してるところが多いらしいんです。そういうところを整備していく必要性っていうのは、
絶対あると思います。今東京都で言うと、小学校・中学校に子供がいなくて、崩壊してる状態
で、部活動がなくなっちゃってるのが現状らしいんです。都心の区なんて、中学校のサッカー部が放課後4つか5つぐらい集まらないと11人にならない。それで、もうはっきり言って学校単位でスポーツっていうのはもう絶対育たない。それだったらやっぱり地域の子供集めてクラブチームを作らないと、日本のスポーツは盛り上がらないですね。まだまだ地域のクラブが全然成熟してない中で、制度や法律だけがどんどん先走っちゃって、実際に細かい内容を話すと、そんな面倒くさいんだったらやりたくないよ、っていうのがやっぱり多いんで。そういったところをきちんとしていかないと、オリンピックだ、ワールドカップだって強い選手は育たないと思うので、まずそういうところをやっていきたいなって思いますね。
≫≫ 地域クラブは損している
さっき言ったようにちょっとクラブで何か買うとか、何かに登録するとかっていうときに、申込書の書面や契約書が読めてないと不利な契約をさせられていることは多分にありま
す。後は団体内で規約をつくろうとかいったときに、やっぱり規約がないとみんなバラバラになっちゃうんで、1つそういう規約が作れるだけでそれでみんなの気持も変わってくる
し。最近で言うとさっき言ったようにNPO法人になりたいっていうところが多いんで、NPO法人はそれこそ特殊な法人だけど、日本の中では、普通の株式会社や有限会社とかと同じ立場の会社なので、いろんな法律的な権利・義務が出てくるんですよ。そういうことを知らないと、さっき言われたように1年後には誰も活動してなくて、結局やめちゃう。今東京都も毎年何万件っていうNPOの申請があるけど、毎年半分は休眠しちゃってるっていう状態なんです。やっぱりそういう知識っていうのは知っといたほうが、知らないよりはいいと思います。

特に最近聞くのが指定管理者制度とか。ああいうのは別に法人じゃなくても、任意の団体でもいいことなってますけど、多分行政側からしたら、任意のクラブよりは、法人格持っていたほうが当然いいって言うし。当然もし仲立ちをやってくださいねって言われたときには、その間で取り交わす協定書なんていうのが10枚くらいの難しい文章がずらっと書いてあるんで。当然行政側は行政の都合のいいような文章しか書かないんで、それをいかに読んで、ここは受けられます、受けられませんっていうことを言えるか。それをそのまま判子押しちゃったら、いざ施設の何か壊しちゃった時に、すいません行政のほうで直してくださいって言っても、いや契約書見てください、これはあなたたちで直さなくちゃいけないって書いてあるでしょっていうことになっちゃうんですよ。そういったことを含めて、そういったリスクマネジメントっていうのを、やっぱりいくらアマチュアとはいえやっとかないといけないのかなっていう気はしますね。
たぶんスポーツのことに関する法律っていうことに関しては、まだまだそんなに日本は多くなくて、どうしても民法そのまま活用して、何とかくっつけちゃってやっているとかっていう現状が多いんで、やっぱりもっともっとそんなスポーツを振興させるための法律とか、規則とかそういったものをどんどん整備しないと、たぶんアマチュアのまま日本のスポーツ止まっちゃうような気がして。だから多分法律だけに限らず、プロスポーツの中での選手の立場を保護する権利だったりとか規則だったりっていうのが、未だに個人じゃなくて協会側が握っていたりだとか。そういうことがあるんで、じゃあ個人の1人の選手としてどういう権利があるのっていったときに、やっぱり協会とかチームの言うことを聞かざるを得な
い。で、無理矢理な契約させられたり、現役が終わって引退したら、何の援助もしてくれないとか。そういった事も多々あるので、そういったところの規則とか整備とか、考えていかないと。たぶん本当に頭がよくて、お金儲けしたい人は、絶対スポーツはやらないと思うんですよね。かといって才能ある人が、どんどんスポーツに行ってくれないと、スポーツも活性化しないんで。やっぱり本当に手放しに、老後のことも考えず、一生プロスポーツで全うしていきたいんだっていう人をどんどん増やせるような法律とか環境をつくらないといけないですね。たぶん中学・大学くらいの100%の有能な選手が、全員プロには行きたいと思ってない。みんな大学卒業したら俺はきちんと仕事をしてって言う選手多いと思うんですよ。それはやっぱり将来に不安があったりとか、そういうのがある。そういうところも整備していかなきゃいけないのかなって思いますよ。
≫≫ 自身の将来
今は、アマチュアの世界では、どんどんスポーツ関係のNPOの設立とか運営って言うのに携わっていきたいですし、たぶんそれって僕一人じゃなくって、各区や市の、そういうスポーツ振興課のようなところといろいろ連携組んで。彼らは彼らで自分の市とか区に、そういう素晴らしいNPOのスポーツ法人を立ち上げたいと思っています。それが要は文部科学省から言われてることで、じゃあそこのアドバイスをしますよとかっていうところでやっていきたいっていうのが、アマチュアスポーツで僕がやりたいことの1つです。その中にはさっき言ったように、契約書をちゃんと読めるとか、契約書を作れるとか。それからこう、うまい話が来ても、ちゃんと対処できるとかっていうことのアドバイスとか。後は、本当にそのNPOの中での規則だったりとか、労務だったりとかいろいろ。NPOとはいえ普通の会社と同じなんで、そういう会社がやってるような決め事などはきちんと整備できればなと、アマチュアの関係では思ってます。
プロの世界に目を向けると、やっぱりそのサッカーとかバレーとかバスケとか、野球も含めて、プロスポーツの中での契約の仕事ですね。ちょっと話を聞くところによると、弁護士はいるらしいんですけど、活用されてないっていうのが現状らしくて、ただ単に本当に大きな問題が起きたときだけに弁護士としてついてくるみたいなんです。じゃあいざ契約書1枚作るのにいちいち弁護士のそんな人が聞いてるのかっていうとそうでもないみたいなんです。じゃあ、そういったところでどんどん現場に行って、現場の人と話して、きちんとした契約書見ますよとか、そういう面をやりたいなと。まあちょこちょこそういうのでは、1件2件やらせてもらったりしていて、お話はもらってるんで、それを広げていければなと思っています。あと、まあ1件ぐらいプロチームの設立とか、そういうのに携わりたいですね。設立の元の部分からやって、内部規制も全部やってっていうことも、できればなと思っています。今ちょっとそれらしいこともやってるんですけど、それをうまく成功させて、やっていければなと。
谷塚さんはスポーツ選手だった自身の経験や、法律家としての知識を生かしてスポーツ界の底辺拡大、整備に尽力しています。こういう人がこれから次々とスポーツ界に出てくることによって日本のスポーツが今よりさらに栄え、それが強化にも繋がっていくのではないしょうか。
――谷塚 哲さん プロフィール――
やつかてつ。1972年、埼玉県生まれ。東京都行政書士会渋谷支部所属。中学、高校、大学と全国レベルでサッカーを続け、大学卒業後も仕事の傍ら関東社会人サッカーリーグでプレー。東京都代表として国体優勝も経験する。3年前に選手を引退し、行政書士となる。2005年度よりスポーツ法務専門の法律事務所を開業し、自らの経験と行政書士としての知識を活かし、スポーツ法務の専門家を目指す
事務所ホームページ:http://www.geocities.jp/yatsukagyouseishoshi/
石黒祥樹、神谷 隆太