前回は、蔵本さんのご経歴と、スポーツと環境のつながりについてのお話でした。今回は、蔵本さんの具体的な活動についてのお話になっていきます。
■オリンピックと環境
―いま2016年に開催するオリンピックの国内招致活動をしていますが、オリンピックと環境についてどうお考えですか?
スポーツイベントに限らず、大規模イベントだと大きな環境負荷がかかるものです。では、そのイベントがなくなったらどうする?と言われたら、なくすことを考えるよりも、どうやったら環境に負荷をかけずにやれるか、という発想をするほうが現実的だと私は思います。実際、国際オリンピック委員会(IOC)も『スポーツの持続可能な開発』ということで動いています。1996年には、環境について言及するために、オリンピック憲章が改定され、オリンピックムーブメントの三本目の柱に『環境』というのが新たに付け加えられました。
今回2016年のオリンピック招致に東京が名乗りをあげたということで、開催地の決定には環境が重要なファクターになることは間違いありません。この間のトリノオリンピックでも、大会そのもので出てくる二酸化炭素の排出量をゼロにしようという試み、いわゆる”カーボンニュートラル”の取り組みをしていました。2012年の開催が決定したロンドンでも、大会会場への往来(交通)で発生する二酸化炭素を削減しようという計画を出しています。オリンピックでの環境対策は、いまや一番重要と言っても過言ではありません。だから、東京も積極的に環境問題の対策を打ち出してくると思います。そうは言っても、個人的には、単純に日本にオリンピックがきたらいいなぁと思います。楽しいじゃないですか(笑)
―では具体的に、日本でのオリンピック開催を実現するためには、どのような環境対策をすればよいとお考えですか?
想像つかないですね(笑)。なぜ想像つかないかと言うと、ロンドンオリンピックの話も私の想像を超えちゃったんですよ。なので、2016年の大会では、それを上回らなければいけない気がします。勝手な私論を言わせてもらうと、例えば日本全国で植林を増やすとか。日本は実は森の国ですよね(国土の67%が森林)、だから、そのことをアピールする上で、世界の人たちに日本には優れた森があるというイメージを持ってもらうのはどうだろうかと思います。
あと、今は東京と福岡の2都市が名乗りをあげていますが、もし東京でやることになったとしても、東京だけが環境対策をするというのはやめて欲しいんですよ。北京を見ていても、個人的には少しがっかりしています。北京は確かに環境対策をして街をきれいにしています。他の都市も北京と同様にやっているところもあると思いますが、中国という国全体からすると、ちょっとどうかなという感じを受けています。大気は循環しているので他の場所で汚された空気は、遠く離れた場所にも影響します。北京だけきれいにしても、どこか他の都市の空気が汚ければ、その汚い空気が入ってきてしまって、関係なくなってしまうんですよ。黄砂の問題もありますね。どこかひとつの都市だけ空気をきれいにしても仕方ないんですね。だから、もし東京でやることになったとしても、日本全体で、国を挙げて環境問題に取り組んでもらいたいと私は思います。
■スポーツのチカラ

GSAでは、使用済みのテニスボールを難聴児のいる学校などへ提供し、教室の環境向上に役立てるためのテニスボールリユーズ活動を行っています。補聴器をつけている子供たちにとって、教室で椅子や机を動かす際に出る“ギー”という音は非常に不快なもので、生活に支障をきたします。補聴器をつけているとラジカセで録音したように音が全て均一に耳に入ってきます。耳の悪くない人は、普段音を聞き分けているんですね。例えば、今こうやって私にインタビューしている時も、私の声以外は聞こえないようにシャットダウンしていると思うんですよ。でも、補聴器をつけた人たちというのは、その機能をお持ちでない方がいらっしゃいます。どういうことかというと、自分で聞きたい音を選べないんです。つまり、入ってくる音を全て脳に入れなきゃいけないので、“ギー”と椅子を引きずった時に出た音は、大きな音のままギーって頭に入ってくるんです。そういった障害をなくすために、古くなって使わなくなったテニスボールを再利用して、その椅子の脚につけられれば、安心して学校に通うことができるし、この子にはあまり大きな声でしゃべってはいけないんだ、という意識づけにもなります。
テニスボールは、年間3000万個消費されています。そのテニスボールは使用後どうなっているのか、と掘り下げていくと最終的にはごみになっています。そういった現実や、捨てられるよりも、もう一回違う形で使えることをみなさんに知ってほしいという意味もあり、私たちはそういった活動をしています。全国の小中学校からの問い合わせを受けて、ボールを提供してくださる方たちからも連絡を受けて、『ボール300個をその○○学校に送ります』といった形で間をとりもっています。

そうやって、つながりができた学校で、「我々はこういう団体です」ということを説明してもらい、「運動会ができるのも空気がきれいな方がいい、ということを生徒に伝えてください」と広めてもらっています。「今日こうやって運動会が出来て、楽しむことができるのは、空気がきれいなおかげだから感謝しなくちゃ。そして、来年も再来年も自分たちの次の世代も、こうやって運動会ができるように、これからみんな環境のことを考えて行動していこうね」とか、「電気は大切にとか、水はこまめに止めるとか、そういったことを忘れずにやれば、環境は良くなっていくんだよ」ということを生徒に伝えてもらう。そして、「そういうことを思っている人は世界にはたくさんいて、それがこのエコフラッグなんだよ。あの○○選手も参加していることだから、みんなもその選手のようにやろうね」と言えば、子供たちも入りやすいですよね。スポーツはそんな素晴らしいチカラを持っているんですね。
■人数×意識×行動
Global Sports Allianceという名前。Globalは世界、Allianceは連合や同盟といった意味を持ちます。スポーツをやっているわれわれ同士で連携をとって、大きな連合体をつくっていきましょう、というのが私たちの活動理念です。私たちは、自分たちの活動の公式を「人数×意識×行動」と言っています。私たちが社会をつくっていくための公式というのは、たくさんのスポーツ愛好家の人数、同じ思いを持っている人数、それから、同じ目標に向かって行動しましょうという意識、ちょっとずつでも自分たちのできるところからやろうという行動。それらが掛け算になって私たちがやろうとしていることが実現するのではないかと思います。
■スポーツでみんなが仲良くなる
―蔵本さんにとってのスポーツ文化とは何ですか?
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事務所に貼ってある世界地図
GSAは世界中にある
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どれだけ仲良くなるかってことだと思います。顔が見えるコミュニケーションをどれだけとれるか、というのがスポーツ文化なのかな。スポーツをきっかけに喧嘩されたら困りますからね。スポーツをやることで仲良くなってほしいっていうのが、そもそものスポーツの目的だと思います。オリンピックもそうですけど、スポーツを通じてコミュニケーションをして、仲良くなって帰ってくる。こんなのが私の考えるスポーツ文化です。
どうでしたか?環境問題は誰もが考えなければならない問題ですが、具体的にどう行動していいのかわからなかったりするのが現実です。スポーツを通じて環境問題にアプローチしていくことは非常に有効な手段だと思います。
実は今回SOJは、環境とスポーツに関してのフリーペーパーを発行することになりました。発行予定日は10月と11月です。楽しみにしてください。
専用ブログ=環境×スポーツ
→http://blog.livedoor.jp/soj_project/

GSAホームページ:http://www.gsa.or.jp/jp/index.shtml
編集:金石 浩爾
文字起こし:猪狩 清徳