SEEDS-net vol.85
2007年8月27日発行
 

 もうすぐ9月だというのにまだまだ暑さ厳しい日が続いていますね。みなさま、いかがお過ごしでしょうか。
今号は「 Number 」で連載中の「突撃 ! !エイジーニョ」を執筆中の吉崎エイジーニョさんへの突撃!インタビュー。そして、あのスポーツブランドのあのCMへのメンバーのオピニオンです。では、世界陸上のお供に SEEDS-net をど〜ぞ!

<もくじ>

インタビュー 突撃!エイジーニョさん
マイオピニオン IMPOSSIBLE IS NOTHING

++ インタビュー ++  突撃!エイジーニョさん
  文藝春秋「Sports Graphic Number」で連載中の「突撃!!エイジーニョ」を執筆中の吉崎エイジーニョさんにインタビューを試みた。インタビュー当日、私たちの前に現れたエイジーニョさんの印象は、「突撃!!エイジーニョ」で見せる柔らかな文面そのものだった。エイジーニョさんは早速私たちにヨーロッパを教えてくれた。


 握手。


 日本とは違う、ヨーロッパの挨拶。一人一人、全員と握手してまわった。みんなの心はエイジーニョさんにつかまれた。今日は楽しめそうだ。


 エイジーニョさんは小学校五年生からサッカーを始めた。しかし、自分にサッカーの才能を感じなかった。エイジーニョさんは、高校時代、自分の一番の得意分野である外国語で人生を勝負することを決める。エイジーニョさんは大阪外語大学に進学し、高校時代の経験から興味を持った朝鮮語を専攻する。卒業後、フリーランスのサッカーライターを経験。その後、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科にて修士課程を修了する。ここでは、消費者行動研究を専攻し、韓国のKリーグを研究しながら、知識を深める。

 そんなエイジーニョさんが「突撃!!エイジーニョ」の企画でドイツ行き、ドイツのサッカーリーグ、クライスリーガ10部リーグで海外組になることを決めたにはこのような経緯がある。

 「サッカー専門誌に韓国のコーナーを持っていました。そこの専門性に自信あったし、そこの専門性は必要とされていたから、そのコーナーに自信はあったのだけど、あるタイミングでそのコーナーがすぽっとカットされた。それで、『自分の積み上げてきたものってなんだろう?』って思い始めたのです。韓国のことを分析して、韓国と日本比較して書いて、『日本がなんなのか』って言うのに自信あって、それは絶対必要とされていて、『絶対に自分にしかできない』と確信していたのに、人事異動であっさりとなくなっちゃうのはなんなのだろうと思って。じゃぁ何か取材テーマを変えてみようって事で。あと女の子に振られたからですかね(笑)。

 あと、30歳になるのが怖かったですね。本当にやりたいことをやっておこうと思って。

 ちょうど結婚しようって言ってくれる女の子もいなかったので、今しかないと思って。『じゃぁ俺は何がしたかったのだろう、何になりたかったのだろう』って考えたときに、僕はサッカー選手になりたかったのです。ヨーロッパでやろうと思った。そのときナンバーに連載枠を貰っていて、そこで何かやってやろうと思いまして。あわよくば『吉崎エイジーニョ=韓国』って言うイメージを変えようっていう考えもありまして。それで、ドイツで海外組になろうと思ったのです。」


 まさに、『突撃!エイジーニョ。』そんなエイジーニョさんもドイツではさまざまな苦労を経験する。言葉の苦労、日本とは違う契約の精神、食生活の違いなど、さまざまな困難を経験した。しかしそれは海外で生活する者が誰でも経験すること。エイジーニョさんの経験の特殊性はここからである。日本のごくわずかのサッカー選手のみが経験した、『サッカー、海外組』としての苦労。驚きばかりの日本との違い。


 「僕はヨーロッパに着いて、移籍をして6,7週間続けて試合に出られないという状況が続きました。ベンチも入れない。それで、とある週に、ゴールキーパーが僕に言うわけですよ。僕は毎週毎週、チームのためになると思って、チームのジャケット着て応援しましたよ。『お前、何でそんな楽しそうに応援しているんだ?そんなことしていたら監督はお前が今のポジションに満足していると思うぞ。だから、来週の練習で監督にキレろ。「何で俺出さないんだ。俺はやる自信がある。」って言え。俺はお前を練習で見ている限り、試合に出る力はある。お前は言わないから出られないんだ。監督はお前のこと忘れているぞ』ってことをキーパーに言われました。だから、黙って黙々と練習やっても何も意味がない。以心伝心とかまったくない。そのとき、何でキーパーがはああしてくれたと思います?それは、僕がキーパーではないのでポジションが被らないからですよ。僕がキーパーだったらそんなこと言われなかったでしょうね(笑)。でもこの一言がなかったら13試合も出てないでしょうね。

 僕が嫌だなって思ったことは、ユースチームとの試合ですね。なぜ嫌かって言うと、日本で言う『上下関係』なんてないから、若い選手は大人に対して良いプレーを見せようとするわけですよ。どうなるかって言うと、反則で、容赦なく、蹴ってくるわけですよ。遠慮なしに。若いから、手加減というのがないのですよ。それは10部でも1部でも変わらないのですね。たしかに、僕の行っていたケルンのユースチームにも、幼稚園ぐらいの子が小学校三年生くらいの子にタックルしているわけですよ。体ごとぶつかっていって、泣かせたりしているわけでよ。監督と話したのですけど『一番うまいやつがピッチで力を発揮するべきだ。それが結局チームのためになる。年齢が何歳であることは関係ない。』って言っていたのですね。そこは日本とすごく違うところですよね。

 これは自己責任の違いですけど、日本で草サッカーをやっていると、点を取られたら『ドンマイドンマイ』ってなるじゃないですか。しょうがないから次、がんばろうって。これは、本当はトップのレベルではだめらしいのですよ。日本代表とかはだめらしいのです。でも草サッカーのように下のカテゴリーではやるでしょ。ドイツの場合、上でも下でも、『お前が責任を果たさなかった。』って言い合いが始まるのですよ。それだけ、責任が強いのですね。ヨーロッパで僕は10部でサッカーやっていて、それはすごく感じました。」



 このほかにもサッカーでさまざまなカルチャーショックを感じたエイジーニョさん。でも、そのカルチャーショックは苦労だけではない。ヨーロッパの環境がうらやましいと思ったことがある。エイジーニョさんは自慢の写真を見せてくれた。一万枚以上撮った写真の中からの、一枚。

 「この試合はアウェーの試合だったのですけど、10部リーグの試合に観客がいるのですよ。100人くらい。その人たちみんなプレーヤーの友達とか、家族とか、恋人とか。そういう身近な人が試合を見に来るコミュニティができているのですね。その中には、女子高生みたいな若い子もいるわけですよ。そんな子がどうゆう様子で見ているかって言うと、笑っているのですね。選手が空振りしては笑い、転げては笑い。なんでそんなふうに笑えるのかって言うと、試合しているやつらが真剣だからなのですよね。10部リーグ、町内サッカーのレベルでも、真剣にやれる。そういう環境は凄くいいと思いましたよ。

 ドイツには、全国リーグがあって、地域リーグがある。Jリーグの場合はトップリーグができて、下のリーグを整備しています。だから、いくら地域密着しても発展はしない。トップダウン方式のやり方で、地域住民に自治意識が芽生えないからですよ。ヨーロッパのリーグは、先に地域リーグができて、その上にトップリーグができているのですね。そこが大きな違いです。この地域リーグがあることによって、地域住民にはスポーツチームに『自治意識』をもって参加する。さらに、この仕組みは観戦者がプレーヤーになることが可能なのです。その結果、コアファンが増えていく、ということになる。そういう意味でも下部リーグがあるのは魅力的です。」



 ドイツで、日本のライターでは誰もやっていないことを、身をもって体験したエイジーニョさん。ライターの観点から今後の吉崎エイジーニョの展望を話してくださった。

 「一定時期で、専門性、スペシャリティを育む時期っていうのと、ジェネラリストとしての普遍性を育む時期っていうのを、期間を決めてやるべきだと思うのですね。で、僕は、20代は専門性を育んできたので、30代は普遍性を持って、日本のことを書いてみたい、ヨーロッパのことを書いてみたいというスタンスが頭にあるのですね。

 ひとつ、僕にしかできないタッチというのは、『笑い』ですよね。『サッカーで笑いをとる』ということですね。このヨーロッパの原稿(突撃!!エイジーニョ)も『俺は下手だよ。下手の何が悪いの。下手を笑ってね。』ってこと。この『突撃!!エイジーニョ』という連載っていうのは、基本的に僕が体を張ってボコボコにされるという取材なのですよね。『笑ってよ』って言う。それでいて、結局、最終的に書きたいところは、お堅いテーマだったりするのですけど、それは40~50代で書こうかと。そういう書きたいことはあるのだけれども、『今はとにかく名前を覚えてもらうことをやろう』と思ってやっているのです。普遍性を持って、自分が何なのかって言うのを持ってもらうという時期だと思っている。それが理由で、『お笑い』と言いたくはないのですけど、笑ってもらう原稿を書いているんです。

 40代50代になったときに、サッカーのアジア型の発展論を考えていきたいけど、社会背景が違うから、アジア社会は、ヨーロッパ社会とは同じようにはできないわけですよね。アジア式の一番いいやり方は何なのか。ヨーロッパにはない、アジアにとっての一番いいやり方はなんなのかっていうのを、最終的には追求していきたいなと。」



 エイジーニョさんはライターとして、『自分が持つ武器』をとことん磨いている。他の記者との差別化。自分にしかできないことの追求。韓国、ドイツ、サッカー海外組。そして何より、『やりたい事を、やりぬく。』今回はサッカーでそれを表現した。

 そんなエイジーニョさんに、ライターとしてエイジーニョさんについてこんな質問をした。

 ○ 体を張ったレポートという点で、ライバルはいますか???

 「いないです。他の人がやらないことを考え抜いてやっていますから。大上段からものを言いたくないし、記者や書き手のコンプレックスとして、論じるだけ、論じた後に、『じゃぁ、お前やってみろよ』って言われたら何にもできないわけですよ。伝えることばっかりをしていると、『自分でも何か実践してみたい』という欲望が出てくるわけですよね。『実践者になりたい、自分がやる人になりたい』という欲望ですね。それを今、正直に、やりたいと思います。こういうスタイルなのですけれど、これで僕は先輩と勝負したい。

 先輩に勝ちたい。先輩からページを勝ち取らなければなりませんから!だから先輩が書かないタッチで書きたいです。」



 最後まで一貫して強気な発言。今日はエイジーニョさんに貴重なお話をいただきました。

 そんなエイジーニョさんは私たちに日本のスポーツする環境を整えるためにどういうことをするべきなのか、一緒に勉強しようという提案をしてくださりました。エイジーニョさんは挑戦をやめません。自分ができることを分析し、やると決めたら、とことんやる、そんな人間だなと感じました。そんなエイジーニョさんに、僕は九州男児(エイジーニョさんは九州出身)の男気を感じました。胸が躍ります。

 私たちもこれから楽しくなりそうです。



【参考リンク】
 エイジーニョ・ブログ


  寺田 慎平

++ マイオピニオン ++  IMPOSSIBLE IS NOTHING
 
“IMPOSSIBLE IS NOTHING”( 不可能なんて、ありえない )

 2004 年から adidas が掲げているプロモーションテーマである。 TVCM や街角の広告でもすっかりお馴染みとなっているのではないだろうか。個人的に、好きな言葉の一つだったりもする。
 
 さて、その ”IMPOSSIBLE IS NOTHING” 、最近では有名アスリートが自身の ” 不可能を可能にした ” 体験談を絵を交えて話す、といった形式の CM が放送されている。この CM の完全版が adidas の HP( http://www.adidas.co.jp/ ) で視聴出来るのはご存知であろうか?
 
 サッカーイングランド代表のデビッド・ベッカムや千葉ロッテマリーンズの西岡剛といった TVCM で放映されているものだけではなく、ラグビー元ニュージーランド代表ジョナ・ロムーや棒高跳びのエレナ・イシンバエワといった豪華な面々が揃っている。
 
 彼らはいずれも成功者であるが、ある者は国中からバッシングを受け、ある者は憧れ続けた強豪校に行くことができず、またある者は突然の病で引退を宣告され…その栄光は易々と手にしたものではなく苦難を乗り越えた末に手に入れたものであるということが、彼らの話からは感じ取れるし、そんな彼らの言葉は実に心に響くのである。
 
 目標に向かって努力し、挫折を経験しながらも、再び立ち上がって前に進み、成功を手にする。人生において誰もが経験するであろう過程を、彼らは実にシンプルな形で見せてくれる。だからこそ僕らは、彼らに感動し、涙し、共感せずにはいられないのであろう。

 ちなみに ”IMPOSSIBLE IS NOTHING” は文法的に言えば、主語と補語の倒置(IMPOSSIBLE の強調)であり、「不可能なものはない」というより「不可能がどうした!やればできる!」というニュアンスなのだそう。自分もそれぐらいポジティブに、常に前向きでありたい。


【参考リンク】
 adidas Japan


 椎名 浩之

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