SEEDS-net vol.91
2007年11月27日発行
 

 まず発行が遅れましたことをお詫びいたします。大変ご迷惑をおかけいたしました。
前号の挨拶文では紅葉の訪れについて書いていたのに、この頃はすっかり寒さが身にしみますね。朝晩は吐く息も白く、上着の数も 1 枚余計になったという方も多いのではないでしょうか。さて、そんな寒さとは対照的にサッカー U − 22 代表が北京オリンピック出場を決めるというホットなニュースがありました。普段は冷静でロジカルなコメントをする指揮官がみせた喜びの表情に、胸を熱くした方も多かったと思います。今号では、そんなニュースにも負けないくらいホットな記事を 3 つご用意しました!それでは、どうぞ!(サノッチ)

<もくじ>


++ マイレポート ++  明治神宮野球大会を観戦して

雨の影響で予定より1日遅い11月11日から4日間にわたって第38回明治神宮野球大会が開催されました。大学野球界において、春に行われる全日本大学野球選手権大会と合わせて二大大会に数えられるこの大会は高校の部と大学の部に分かれており、高校の部では各地区の代表が、大学の部では各大学野球連盟の代表が、それぞれ10校ずつ参加してトーナメントを争います。意外なことに、明治神宮野球大会が開催されるようになったのは戦後になってからのことです。戦前は学生野球が職業野球よりも隆盛を誇っていたのでその頃から続いている大会なのだろうと私は勝手に考えていましたが、実際は1970年に明治神宮鎮座50年を記念した奉納試合として第1回大会が開催されたのが始まりなのだそうです。

 さて、東京六大学野球連盟代表としてこの大会に出場した早稲田ナインの勇姿を見るため、私は12・13・14日の3日間、神宮球場へ行ってきました。そこで驚いたのは、早稲田大学応援席は他のどの大学よりも観客が多かったことです。「ハンカチ王子」こと斎藤佑樹投手目当ての観客が応援席に座っていたというのもありますが、学生の数だけを比較してみてもやはり他大学より早稲田の学生のほうが多かったように思われます。また、応援部も4年生はこれで最後の神宮ということでとても気合が入っており、4年生の3人を中心に応援席を終始盛り上げていました。その気合に感化されてか、早稲田応援席は人数こそ早慶戦に劣れどもそれと同等以上の熱気に包まれており、選手にむかって絶え間のない声援を送り続けていました。これは他大学と比べて早稲田の学生に学生スポーツが根付いているからこそなのかもしれません。

 残念ながら早稲田は決勝戦で東洋大に敗れ、初優勝は次回以降に持ち越しとなったわけですが、決勝戦では学生以外の観客も学生と一緒になって早稲田を応援する光景を見ることができました。これは一過性のブームかもしれませんが、それでも早稲田の野球部が注目を集めているのは紛れもない事実です。来年も同じように神宮大会で早稲田ナインを応援する人が見られることを、そして早稲田大学の神宮大会初優勝の瞬間を見られることを切に願います。


井上 壽尚


++ マイレポート ++  この町ではサッカーは単なるエンターテインメントではなく
社会的な意味を持っており非常に感動的です。

2007 年 11 月 14 日、浦和レッズは日本勢として初めてアジアチャンピオンズリーグの優勝を果たした。つい 7 年前には日本の 2 部にいたチームがアジアの頂点に輝いたのである。

冒頭の台詞はその歴史的な一日の前日の公式記者会見で浦和のオジェック監督が語気を強め興奮しながら言った言葉だ。

私は今シーズン、レッズのホームゲームがある日はほとんど埼玉スタジアムに足を運んだ。レッズの勝利を願い応援し、試合の展開に一喜一憂し、観るスポーツ、エンターテイメントとしてサッカーを、浦和レッズを楽しんだ。

だが、オジェック監督はそれだけに留まるものではないと言い放った。「社会的な意味」。抽象的な表現だったのでニュアンスは伝わったのだが、イマイチしっくりこなかった。

決勝戦の翌日、その「社会的な意味」なるものは何なのかと思い、学校をサボって浦和の町に繰り出してみた。まず、浦和駅の東口に先月オープンしたばかりの浦和パルコに行ってみた。入った途端何か違和感を覚えた。「浦和レッズおめでとうセール」と題したセール、これぐらいはある程度予想していた。しかし耳に入ってくる「浦和レッズ〜浦和レッズ〜」という歌声。パルコと言えば私のイメージでは若者向けのアパレルがたくさん入ったデパート、しかもいまはクリスマス商戦の前。その館内を浦和レッズの応援歌が流れ続けている。さらにはほとんどのお店のディスプレイにサポーターが試合中に使う赤色をした浦和レッズのタオルマフラーが巻かれている。池袋のパルコじゃこうはいかないのだろうなと考えると一層不思議な感じがした。

  さっきのはパルコ独特の演出なのだろうと思い、私は西口の老舗百貨店伊勢丹にも行ってみたのだが、そこでも同じような光景を目にした。パルコに比べれば訪れる客の年齢層も商品の価格帯も高い伊勢丹だが、シャネルのある階もヴィトンのある階も浦和レッズの音楽が流れ続けていた。さらに一階のウィンドウにはアジアチャンピオンズリーグのトロフィーが飾られていて、道行く人々はその前で立ち止まり携帯のカメラで撮影していた。ミランやバルセロナのデパートにもビッグイヤーが飾られたりするのかなぁなんてことを私はふと考えていた。

  そのあとも浦和駅の周辺、浦和仲町商店街、オフィシャルサポーターズショップなどふらふらしてみたが、どこも赤、赤、赤。あるカバン屋では赤い商品セールなんてものも行われていた。もちろん優勝した直後でそれに伴った一時的なものもたくさんあったけれど、この町にとっての浦和レッズというものを認識することは充分できた。

  最後に さいたま市 内にある浦和レッズの練習場に行ってみた。ここは浦和駅からはかなり離れた、どちらかと言えば旧大宮市よりの住宅街の中にある。私は自転車だったが歩くと結構時間のかかる最寄駅から来ている人もいた。平日の昼間、かなり寒い日だったにも関わらず性別年齢問わずたくさんの人がフェンスに張り付いて練習を眺めていた。小学生や高校生の集団もいたりで「君ら学校は?」と聞きたくなってしまった。練習が終わるとクラブハウスの出口のところに列を成して大勢の人がファンサービスを楽しみに選手が出てくるのを待っていた。この人たちにとっての浦和レッズ。浦和の町を歩いたときと同じよう感覚を覚えた。オジェック監督の言っていた「社会的な意味」。その答えがなんとなくわかってきた気がする。

  今年の初頭、浦和レッズの広報部長に話を伺う機会がありこんな話を聞いた。「この国の 21 世紀は超成熟社会、それぞれの地域が元気じゃないと成り立たない国。簡単に言うと『国はもう地方の面倒見られませんよ』ということ。だから地域の活性化が 21 世紀のポイントなんです。そこでレッズが役に立てないかということなんです」

  確かにレッズが年金問題や医療問題の解決に直接的な効果を果たしているかどうかなんてことはわからない。でも、レッズがあることでこの町が元気になっていることは間違いない。地域活性化のひとつのモデルになっていることは 間違いない 。気持ちだけではどうしようもない問題もたくさんあると言われるかもしれないが、地域が元気なら解決できる問題もたくさんあると思う。そしてそれぞれの地域が元気なら国全体も元気になるはずだ。 J リーグの唱える百年構想〜スポーツでもっと幸せな国へ〜というのもこういうことなんじゃないだろうか。だから浦和レッズのようなクラブが日本中にたくさんできてくれればこの国は必ずもっと幸せな国になるはずだ。


小森 隆幸


  ++ マイレポート ++  11月17日

11 月 17 日、神宮球場で行われた「日中大学野球交流戦」を観戦しに行ってきました。 2007 年は、日中国交正常化 35 周年にあたる年として「日中文化・スポーツ交流年」と位置づけられており、この試合もその一環として開催されたものです。

 日本チームは、神宮を本拠地とする東京六大学選抜。最優秀防御率に輝いた斉藤佑樹、三冠王の田中幸長 ( 共に早大 ) 、慶大の二枚看板の一翼を担う中林伸陽など、今年春秋を通じて活躍した選手が揃うオールスターチームです。一方の中国チームは大学生選抜とはいえ、選手の大半が先日行われたアジアシリーズ 2007 を「チャイナスターズ」 ( 中国代表チーム ) として戦っている、侮れないチームです。

 午後 1 時にスタートした試合は、寒空の下という表現がぴったり過ぎるほど肌寒い中で争われました。試合は当初の予想通り( ? )終始六大学選抜ペース。結局、 8 人の投手陣が中国打線を散発 3 安打に抑え、 9 対 1 という大差での勝利となりました。それでは、いくつか印象に残ったシーンを紹介します。

 まず一つ目は、 3 回二死満塁のシーンで 6 番・佐々木大輔(明大)が放った、左翼席中段への特大グランドスラム。打った瞬間にスタンドインと分かる綺麗な放物線で、狭い神宮とはいえど、大学生が放つ打球とはとても思えませんでした。打球の行方を確認した後、ゆっくりとダイヤモンドを回る姿がとても印象的でした。

 我等が早稲田の「佑ちゃん」も先発で 2 回を投げ、 8 人の打者から 5 つの三振を奪う力投。初回に 2 四球を許しながらも被安打は 0 、まともに打たれたのは投ゴロ 1 本だけとさすがのピッチングを見せてくれました。来年のシーズンでは、現在の背番号「 16 」から「 18 」への変更を狙っているという佑ちゃん。早稲田では伝統的に左のエースの番号とされ、現在は大前佑輔投手が背負っていますが、果たしてその「野望」は叶うのでしょうか ?

 試合には完敗した中国でしたが、その中でも光った選手が一人。 2 番手として登板し、最速 129 キロの直球と 100 キロ台の変化球で六大学選抜打線を翻弄。 2 回 1/3 を1安打無四球無失点に抑える好投を見せた李宏瑞です。もう少し球速とスタミナがつけば、アジアシリーズで古巣相手に好投した呂建剛(元中日)と並ぶ存在になるかもしれません。

 試合の方は大差がついた結果となりましたが、選手の一挙手一投足に拍手が起こる ( 特に先発マスクをかぶった細山田武史 ( 早大 ) は大人気でした ) など、終始和やかな雰囲気の中で試合は行われました。また一塁側スタンドには、なんと六大学の応援歌をすべて完璧に覚えていた一団がおり、変幻自在のパフォーマンスで試合を盛り上げてくれました。

 全体的にまだ課題が山積みの中国野球ですが、特に投手は制球力、打者は 140 キロを超える速球への対応力の不足が顕著に感じられました。現時点では野球にとって最後となる、来年のオリンピック。北京での舞台に向け、開催国の中国がどこまで課題を克服できるか、今から楽しみです。

田中 亮多

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