12 月 2 日。東京都在住の N 家にて。
「よし、これから東京 D に行くから、支度をしなさい!!」
この声の持ち主は N 家の父。推定年齢 40 代前半といったところ。近所で有名な昭和気質の父は、スポーツといったら当然に野球、大相撲。以下父。
「えっ? なに、おとーさん。だって、今日は野球の日韓戦がある日だよ! 楽しみにしてたじゃん!」
こちらは、良いのか悪いのかは本人に聞いてみないと分からないが、父親そっくりの息子。 10 歳くらい。やはり、スポーツといったら、野球、大相撲。しかし、同級生の影響により、最近サッカーも気になり始めたらしい、お年頃な年齢。以下息子。
父「日韓戦はな、テレビで取り上げられるけどな、テレビではやらない素晴らしいものだってあるだ! ってのを見に行くんだ。ある意味で歴史のお勉強でな。はやくせい!!」
息子「いつもいっつも、自分の道楽に子どもを付き合わせるなんて。。。なんだかな〜」
そして、総武線に乗り、水道橋で電車を降り、橋を渡って、見えてきました、、、 デニーズが。
息子「あれ〜、意外に人、多くない? ってことはやっぱりなんか試合あるんだね! 今日は歴史の勉強とか何とか言ってたけど、何の試合を見るの? もう日本シリーズも終わってるし、大学の試合もないよね? オリンピック予選以外ってなくない?」
父「あのな、歴史っていうのは昔のことだな。昔の野球を見るわけだ。」
息子「くわしく教えてよ〜」
父「じゃあ、教えてやろう。『赤い手袋』がいるチームとピッチャーの『怪童』がいるチームの試合だよ。」
そんなこんなで、ついに BIG EGG こと、東京 D が目の前に。
息子「そんな暗号を言われても、分かんないよ〜。いじわる!! それにしても年齢層高くない? あいや? 『マスターズリーグ』って書いてあるっ! そういや、去年も来たじゃない!! でも読者のみなさまのために、今一度ご説明願いましょう、おとーさんやい!」
父「やっと思い出したかっ! 『マスターズリーグ』ってのはですね、昔の名選手たちが集まりまして、懐かしさを思い出させてくれたり、ウチの息子のような子どもたちに、こんなおじいさんでも技術は衰えないんだ、ってとこを見てもらって、いっそう野球を頑張ってもらったり、イロイロな世代をつなげてくれるような役割を担おうとしてるのですね、はい。それに、高齢化社会は周知の通りでございますが、とは言いつつも、実際に今は高齢社会、いやもう超高齢社会なのでしょうか? こんな社会全体を励まそうとしていることもあるのですね、はい。」
息子「でもさ、現役終えてから何年も経ってるんでしょ。そんな人にはスピードとかパワーもないし、今のプロの選手と比べたら、レベル低いじゃん。そんなのを見て、僕たちはガンバロウとするのかな〜?」
父「これを見て、“凄さ”を感じなかったら、野球の奥深さが分からない、まだまだのレベルなんだよ。ちみは!」
息子「なんかムカつくけど、あんたには勝てないよ」
これで日本の将来は大丈夫なのでしょうか。ということで、札幌アンビシャス vs 東京ドリームスの一戦なのであります。
入場、スタメン発表、試合開始と…
息子「グラウンドにはおじいさんばっかり。でも、バッティングも守備もおとーさんより上手いね! おとーさんの方が若いのに。プッ!」
父「プロじゃねえーもん。当たり前じゃ!」
息子「あっ、スタメン発表だ。去年見た選手がいるから、まぁ、覚えてる感じかな。おとーさんもやっぱりそんなもんでしょ?」
父「そうだな。選手一覧を見てみろい。いまいちな選手だって参加してるんだから、全部の選手の現役時代というと、やっぱり分からないな。」
息子「あ〜、ジャイアンツにいた元木の成績でも恥ずかしくなさそうだね。」
父「でもな、成績は良くないかもしれないけど、個性的な芸がある選手が多くてな、それはそれでよかったんだぞ。来年から北海道日本ハムファイターズの監督になる梨田さんの“こんにゃく打法”なんて、今じゃ絶対やらないよな。東京ドリームスの市川捕手、元大洋、いまのベイスターズだな。あの人はバッターボックスでバットをクルクル回すんだ。打っても打たなくても、それだけで満足なんだよな。今じゃ、そんな芸ができる選手なんていないからな〜。」
息子「でもでも、中日のアライバ(中日の二遊間を守る荒木・井端の愛称)のバックトスとかは? 今年の夏、帝京の上原君もすっごいうまかったと思うよ!」
父「今は単純なうまさになっちゃっているんだよな。プレーの延長線上でしかないだろ。独創的なものってかな、まぁ仕事でお金がかかっているわけだし、それはそれでしょうがないけど…」
息子「へ〜。野球って奥が深いね。あっ! 試合が始まる!」
父「マスターズリーグの面白みは、場内実況もあるよな。選手にも聞こえるから、対話しながらプレーが進むんだ。去年、来た時は斉藤明夫に対して、“背面投げ”の催促をしたらやってくれたしな。」
息子「あ〜、それもあったね! でも僕は村田兆治のストレートかな。おとーさんより 10 歳以上年上なのに、 140 キロ近く投げちゃうんだもん!」
父「そうだな。きっと今日も登板してくれるぞ。夢と希望を与えてくれるマスターズリーグだからな!」
そして時は過ぎ、本日一番の盛り上がりどころ。 5 回表札幌の攻撃。
息子「あっ、赤い手袋の人が出てきたね。ヤクルトの前の監督だった若松に代わるんだからすごい選手なの? ってか、今日のキーワードだったじゃん!」
父「あれはな、『赤い手袋の柴田』っていってな、王・長島の V9 を支えた足がめっちゃ速い選手だったんだ。しかも、王・長島も一緒に試合に出ている中で 4 番を打った経験もあるんだ。」
息子「ん? ピッチャーも代わるみたいだね。」
父「まさか!?!? キーワードに『赤い手袋』と『怪童』っていったろ。打者で『怪童』というと、中西太っていう西鉄のサードの選手がいたんだけど、腱鞘炎になっていなかったら、長島を超える! とも言われてたんだがな。先日亡くなった稲尾さんと同じころの選手だ。で、ピッチャーで『怪童』というと、尾崎行雄投手を指すんだけど、柴田と尾崎といえば、夏の甲子園を騒がせていてな。“東の法政二、西の浪商”といわれるライバル同士だったんだが、まさか、その対決が??」
アナウンス「ピッチャー河野に代わりまして……尾崎」
父「……」
息子「わ〜! すごい歓声だね! …おとーさんっ! また泣いてるよ。たしか、去年の江夏先発でも泣いてたよね。」
父「おま、えにも、、、いつ、か…こんな日がきゅう¥るんどぁ…」
息子「なんか、訳が分かんないけど、ごめんなさい。ってあいだに、柴田がツーベース打ったね。おとーさんの先輩の勝ちだね!」
アナウンス「ピッチャー尾崎に代わりまして……村田」
息子「こっちもすげー歓声だ! これは僕は3倍ワクワク!!! おっと、さっそく投球練習から、はえーー!!」
父「(小声で)こんな息子に育って、えがったの〜」
なんやら、かんやらで試合は終了。
息子「今日はすっっっげー、おもしろかったよ、おとーさん。スピードは遅くても、誰も暴投しないし、動きがスムーズなのが分かったよ。やけにテレビゲームで強いわけだね。ポイントとしては、無駄に動いてないとか?」
父「やっと、頭で分かるようになったか。でもな、頭で分かるのは多くの人ができるんだけど、それを実際にプレーするのは難しいんだぞ。それができていれば、おとーさんなんかな……」
息子「はいはい、分かったから、昔話で泣かなくていいよ、もう。そう、このマスターズリーグはプロ野球のオフシーズンにやるから、年がら年中、プロの動きを見て勉強ができるね。じゃあ、次の 18 日の火曜日とか 1 月 2 日も来ようよ!」
父「あ〜、その日は忘年会だな。あとよ、 2 日は箱根駅伝でいいじゃん。正月は寝させてくれよ。ちなみに BS デジタルでは録画放送があるから、それでも見とけばいいって。」
息子「ちょっと、尊敬しちゃった、僕がバカでしたよ。。。」
めでたし、めでたし(?)
と、こんな風な親子にならずに、テレビではなく、ぜひ野球場へ足を運んで下さい。カメラでは切り取ることのできないエンターテイメントがそこには詰まっております。親子だけではなく、祖父母、孫を組み合わせた 3 世代をもつなぎ合わせてくれる。球場はドームになっていても、お客さんの雰囲気は昔の北九州市民球場や川崎球場を思い出させてくれる。「温故知新」。今年のマスターズリーグのテーマでありますが、観戦をしていて本当にこの言葉がぴったりと当てはまりました。忘れ物を取りに帰る機会はこんなところにもあったものです。
西山 裕貴
【参考リンク】
プロ野球マスターズリーグ HP
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