SEEDS-net vol.92
2007年12月12日発行
 
 皆様、寒い時期ですがいかがお過ごしでしょうか。“師走”の語源って、師も走るぐらい忙しい時期、って言いますけど、本当なのかは定かではないですね。ただこの時期は確かに忙しいです。 SEEDS-net 編集部も再編やら何やらでドタバタしております。そんなわけで発行が遅れてしまい申し訳ございません。。それでは、 SEEDS-net vol.92 をどうぞ!
また、次号は 12 月 25 日発行ということで、 SEEDS-net 〜クリスマス ver. 〜 をお届けする予定でございます。ご期待下さい!(謙)

<もくじ>


++ マイレポート ++  クラブW杯、歴史に残る一戦を前に

浦和レッズが日本のクラブとして初出場、初戦のセパハン戦では FW 永井が日本人初ゴールを決めるなど 3-1 で快勝した事もあり、現在開催中のクラブ W 杯は例年にない盛り上がりを見せている。浦和レッズの次の対戦相手である欧州王者の AC ミランにも注目が集まり、練習場脇のスタンドは連日人で溢れている。

何を隠そう僕は AC ミランの大ファン、いわゆるミラニスタである。シャツはもちろん、ジャンパーやニット帽、手袋といった全てのものをミランで統一し、試合でもないのにフラッグを持って単身マリノスタウンに乗り込んで練習を観てきました。

テレビを通してしか見ることが出来なかった選手を間近に見れて大興奮。そんな中、明らかに赤黒で統一された格好をしていることも手伝って、沢山のミラニスタの方と知り合うことが出来ました。

みんなそれぞれミランにまつわる何らかのエピソードを持っていて、ある人はレオナルドとの 2 ショット写真を自慢気に見せてくれ、またある人は AC ミランのホームスタジアムであるサンシーロに行った時の話をしてくれた。来日の際に FW フィリッポ・インザーギにプレゼントを渡そうとした、なんて人もいた。


そんな話を聞いていたら、いわゆる " チーム愛 " の正体が少し分かった気がした。

練習に来てしまうようなコアなファンじゃなくても、多かれ少なかれファンはチームにまつわる " ストーリー " を持っている。テレビで試合を観て感動した、なんてのも立派な " ストーリー " だ。そしてその " ストーリー " にはチームの歴史はもちろん、その人の人間性だったり過去だったり、人それぞれ色んなものを垣間見ることが出来る。同じ試合を観ていたにしても、その時その人が何をしていたか、何処にいたかで全く違う " ストーリー " になる。去年の CL 決勝なんて本当に感動的な試合であったが、あの試合も観た人の数だけ " ストーリー " を生み出しているはずなのだ。

" 地域密着 " という言葉が浸透し、実際に地元のチームを愛する人間が増えている中で、僕のような海外チームのファンは時に " ニワカ " だとか " 欧州かぶれ " と揶揄される。確かに僕はミラノの街に何のゆかりもないし、イタリアに行ったこともない。

でも、それでもいいんだと、僕は思う。

地元かどうかなんて、結局はキッカケに過ぎないのではないか。もちろん " 地域密着 " という考え方自体は素晴らしいし、色んな面で合理的でもある。だが、ふとしたキッカケでチームを好きになり、追いかけていく中で様々な思い出を手にし、そこに映り込む人やモノ、あるいは自分自身といった全てのものに愛情を注ぐことに、きっと優劣なんて存在しない。そうした " ストーリー " はきっと " アイデンティティ " という言葉に言い換えることも出来る。

地元に愛するチームがあって、そのチームがあることで地元に誇りを持つことが出来る。それはとても素晴らしいことだし、実際浦和生まれ浦和育ちの浦和サポなんて人は本当に羨ましい。 "Pride of Urawa" ってフレーズは凄い言葉だと思う。

でも、僕達にだって "Pride" はある。強いから好きなわけじゃない、有名選手がいるから応援しているわけでもない。たとえ遠く離れていたとしても、ミランは僕に沢山の思い出をくれた。だからそこには浦和サポにも決して負けない " 愛情 " がある。胸を張って堂々と自分はミラニスタだと言える。

明日はきっと忘れられない試合になる。

誇りを持って、戦おう。



  椎名 浩之

++ マイレポート ++  直径5cmの球に生命を吹き込むスポーツがある。

今、“フットバッグ”というスポーツがにわかにアツい。 5cm ほどの小さな布製のボール(これをバッグと呼ぶ)を足で華麗に操るスポーツ。初めて見る人は恐らく衝撃を受けるであろう。「何がどうなっているのかさっぱりわからない」とは、初めてフットバッグを見た人の多くが口にする言葉である。このフットバッグの全国大会、“ Japan Footbag Championship 2007 ”が 11 月 23 日、 24 日と 2 日間に渡って開催された。

11 月 23 日金曜日。天気は晴れ。大会 1 日目のこの日は予選が行われた。上位 8 名が決勝へと進出できるこの予選。僕も出場したが、惜しくも決勝に進むことはできなかった。去年のこの大会では運良く決勝に進めたものだから、今年もいけるかな、と思いきや、そううまくはいかないもので。それでもベストを尽くしての敗退だったから、悔しい思いはあまりなく、逆に一種の爽快感を胸に会場を後にした。

2 日目は決勝。この日の天気は曇り。会場は 東京都大田区 にある大森スポーツセンター小ホール。決勝にふさわしく、立派なステージが用意された。今年で 5 回目を数えるこの全国大会だが、ここまで立派なステージで大会が行われたのは、今回が初めてだ。

昨日敗退してしまった僕は、スポットライトを浴びるステージの上を、光の当たらない観客席からただただ眺めることしかできなかった。この日はもう競技者ではなく、一人の観客でしかしなかった。自分はなんであのステージに立っていないんだろう。立ちたかった。本当に悔しい。昨日感じた爽快感なんてどこかへ消え去ってしまっていた。

決勝に進出したプレイヤーの演技はどれも非常に素晴らしかった。圧巻だった。自分のレベルが決勝のレベルに達していないことは明白だった。その完成度の高い演技は、まるでバッグに生命が吹き込まれていたかのようだった。

この大会に参加したプレイヤーは皆、フットバッグにアツい情熱をささげている。その情熱が足からバッグへと伝わり、素晴らしい演技になる。今回、僕は結果を残せなかったが、悔しい気持ちをアツい情熱へと変換させて、一層努力していく。来年はこのメールマガジン上でいい報告ができるようにするので、乞うご期待!

山城 謙

【参考リンク】

Japan Footbag Championships 2007

JFC2007 Opening Movie

直径 5 センチにかける情熱


++ Sport Illustrations ++  第10回 アカクロな仲間たちを応援に

トップリーグの試合でも滅多に埋まることのない秩父宮の観客席が、この日ばかりは満席になる。 11 月 23 日は勤労感謝の日である。しかし、早稲田大学及び慶應義塾大学のラグビー部ファンにとっては、大事な大事なラグビー早慶戦の日だ。

僕が所属する石井昌幸ゼミ(国際スポーツ文化論)から、 6 人もの選手が出場するということで、 2 〜 4 年の有志のゼミ生で観戦に行ってきた。事前にラグビー部副主将を務める畠山さん(石井ゼミ 4 年)にゼミ生+石井先生分のチケットを手配していただいていたため、バックスタンドのほぼ最前列という素晴らしい席での観戦となった。

まずは選手入場である。にわかに沸き立つスタンド。伝統のアカクロジャージを纏った男たちは颯爽と姿を現しフィールド上で円陣を組んだ。なんともカッコいい。まさにそれだけで画になっている。普段、キャンパス内で見かける彼らとは別人…といったら失礼かもしれないが、発せられるオーラが違うような気がする。フィールド上の気迫が観客席にも伝わってきたのだろうか、僕らゼミ生のテンションも徐々に上がりだす。スタメンの同期ゼミ生の顔を探し、見つけたら名前を叫んでみる。テンションが上がっているのは、逆に応援しているこっちの方で、試合に集中している彼はいたって冷静だ。観客席に顔を向けるようなことはしない。

さぁ試合開始だ。序盤こそ両チームとも探り合っているような試合展開であったが、前半 13 分に早稲田がトライを上げると、俄然早稲田ペースで試合が進む。早稲田は慶應の反撃を凌ぎながら、トライを重ねていった。気づいてみれば、早稲田は慶應に 1 得点も許すことなく 40 − 0 で快勝していた。

早稲田の勝利は確かにとても嬉しいものだった。だが、それ以上に感慨深かったのは同じゼミのゼミ生が試合に出場し、活躍している姿を見られたことだった。ゼミで見せる「普段の彼ら」と違う顔が、とてもまぶしく思えたのだろう。観戦した石井ゼミ生たちは異口同音に彼らの勇姿を褒め称え、感激していた。

このように、知人・友人の試合での活躍を見たり、応援することができるのがカレッジスポーツの醍醐味だといえる。そういった意味では、スポーツ科学部の学生は恵まれているのだ。なぜなら様々な体育会に所属する学生が身近にいるのだから。でも僕は、ふと余計なことまで考えてしまうのである。他学部の学生たちにもこういった感覚ってあるのだろうかと。

試合後、試合に出場した石井ゼミ生 6 人が僕らのいる観客席の前に挨拶に来てくれた。彼らの表情は一様に晴れやかで、そして誇らしげであった。僕らはそれに笑顔で応えた。

                             

佐野裕文
                               


++ マイオピニオン ++  今年も『昭和野球』が帰ってくる

12 月 2 日。東京都在住の N 家にて。

「よし、これから東京 D に行くから、支度をしなさい!!」

この声の持ち主は N 家の父。推定年齢 40 代前半といったところ。近所で有名な昭和気質の父は、スポーツといったら当然に野球、大相撲。以下父。

「えっ? なに、おとーさん。だって、今日は野球の日韓戦がある日だよ! 楽しみにしてたじゃん!」

こちらは、良いのか悪いのかは本人に聞いてみないと分からないが、父親そっくりの息子。 10 歳くらい。やはり、スポーツといったら、野球、大相撲。しかし、同級生の影響により、最近サッカーも気になり始めたらしい、お年頃な年齢。以下息子。

父「日韓戦はな、テレビで取り上げられるけどな、テレビではやらない素晴らしいものだってあるだ! ってのを見に行くんだ。ある意味で歴史のお勉強でな。はやくせい!!」

息子「いつもいっつも、自分の道楽に子どもを付き合わせるなんて。。。なんだかな〜」

 

そして、総武線に乗り、水道橋で電車を降り、橋を渡って、見えてきました、、、 デニーズが。

息子「あれ〜、意外に人、多くない? ってことはやっぱりなんか試合あるんだね! 今日は歴史の勉強とか何とか言ってたけど、何の試合を見るの? もう日本シリーズも終わってるし、大学の試合もないよね? オリンピック予選以外ってなくない?」

父「あのな、歴史っていうのは昔のことだな。昔の野球を見るわけだ。」

息子「くわしく教えてよ〜」

父「じゃあ、教えてやろう。『赤い手袋』がいるチームとピッチャーの『怪童』がいるチームの試合だよ。」

そんなこんなで、ついに BIG EGG こと、東京 D が目の前に。

息子「そんな暗号を言われても、分かんないよ〜。いじわる!! それにしても年齢層高くない? あいや? 『マスターズリーグ』って書いてあるっ! そういや、去年も来たじゃない!! でも読者のみなさまのために、今一度ご説明願いましょう、おとーさんやい!」

父「やっと思い出したかっ! 『マスターズリーグ』ってのはですね、昔の名選手たちが集まりまして、懐かしさを思い出させてくれたり、ウチの息子のような子どもたちに、こんなおじいさんでも技術は衰えないんだ、ってとこを見てもらって、いっそう野球を頑張ってもらったり、イロイロな世代をつなげてくれるような役割を担おうとしてるのですね、はい。それに、高齢化社会は周知の通りでございますが、とは言いつつも、実際に今は高齢社会、いやもう超高齢社会なのでしょうか? こんな社会全体を励まそうとしていることもあるのですね、はい。」

息子「でもさ、現役終えてから何年も経ってるんでしょ。そんな人にはスピードとかパワーもないし、今のプロの選手と比べたら、レベル低いじゃん。そんなのを見て、僕たちはガンバロウとするのかな〜?」

父「これを見て、“凄さ”を感じなかったら、野球の奥深さが分からない、まだまだのレベルなんだよ。ちみは!」

息子「なんかムカつくけど、あんたには勝てないよ」

これで日本の将来は大丈夫なのでしょうか。ということで、札幌アンビシャス vs 東京ドリームスの一戦なのであります。

入場、スタメン発表、試合開始と…

息子「グラウンドにはおじいさんばっかり。でも、バッティングも守備もおとーさんより上手いね! おとーさんの方が若いのに。プッ!」

父「プロじゃねえーもん。当たり前じゃ!」

息子「あっ、スタメン発表だ。去年見た選手がいるから、まぁ、覚えてる感じかな。おとーさんもやっぱりそんなもんでしょ?」

父「そうだな。選手一覧を見てみろい。いまいちな選手だって参加してるんだから、全部の選手の現役時代というと、やっぱり分からないな。」

息子「あ〜、ジャイアンツにいた元木の成績でも恥ずかしくなさそうだね。」

父「でもな、成績は良くないかもしれないけど、個性的な芸がある選手が多くてな、それはそれでよかったんだぞ。来年から北海道日本ハムファイターズの監督になる梨田さんの“こんにゃく打法”なんて、今じゃ絶対やらないよな。東京ドリームスの市川捕手、元大洋、いまのベイスターズだな。あの人はバッターボックスでバットをクルクル回すんだ。打っても打たなくても、それだけで満足なんだよな。今じゃ、そんな芸ができる選手なんていないからな〜。」

息子「でもでも、中日のアライバ(中日の二遊間を守る荒木・井端の愛称)のバックトスとかは? 今年の夏、帝京の上原君もすっごいうまかったと思うよ!」

父「今は単純なうまさになっちゃっているんだよな。プレーの延長線上でしかないだろ。独創的なものってかな、まぁ仕事でお金がかかっているわけだし、それはそれでしょうがないけど…」

息子「へ〜。野球って奥が深いね。あっ! 試合が始まる!」

父「マスターズリーグの面白みは、場内実況もあるよな。選手にも聞こえるから、対話しながらプレーが進むんだ。去年、来た時は斉藤明夫に対して、“背面投げ”の催促をしたらやってくれたしな。」

息子「あ〜、それもあったね! でも僕は村田兆治のストレートかな。おとーさんより 10 歳以上年上なのに、 140 キロ近く投げちゃうんだもん!」

父「そうだな。きっと今日も登板してくれるぞ。夢と希望を与えてくれるマスターズリーグだからな!」

そして時は過ぎ、本日一番の盛り上がりどころ。 5 回表札幌の攻撃。

息子「あっ、赤い手袋の人が出てきたね。ヤクルトの前の監督だった若松に代わるんだからすごい選手なの? ってか、今日のキーワードだったじゃん!」

父「あれはな、『赤い手袋の柴田』っていってな、王・長島の V9 を支えた足がめっちゃ速い選手だったんだ。しかも、王・長島も一緒に試合に出ている中で 4 番を打った経験もあるんだ。」

息子「ん? ピッチャーも代わるみたいだね。」

父「まさか!?!? キーワードに『赤い手袋』と『怪童』っていったろ。打者で『怪童』というと、中西太っていう西鉄のサードの選手がいたんだけど、腱鞘炎になっていなかったら、長島を超える! とも言われてたんだがな。先日亡くなった稲尾さんと同じころの選手だ。で、ピッチャーで『怪童』というと、尾崎行雄投手を指すんだけど、柴田と尾崎といえば、夏の甲子園を騒がせていてな。“東の法政二、西の浪商”といわれるライバル同士だったんだが、まさか、その対決が??」

アナウンス「ピッチャー河野に代わりまして……尾崎」

父「……」

息子「わ〜! すごい歓声だね! …おとーさんっ! また泣いてるよ。たしか、去年の江夏先発でも泣いてたよね。」

父「おま、えにも、、、いつ、か…こんな日がきゅう¥るんどぁ…」

息子「なんか、訳が分かんないけど、ごめんなさい。ってあいだに、柴田がツーベース打ったね。おとーさんの先輩の勝ちだね!」

アナウンス「ピッチャー尾崎に代わりまして……村田」

息子「こっちもすげー歓声だ! これは僕は3倍ワクワク!!! おっと、さっそく投球練習から、はえーー!!」

父「(小声で)こんな息子に育って、えがったの〜」

 

なんやら、かんやらで試合は終了。

息子「今日はすっっっげー、おもしろかったよ、おとーさん。スピードは遅くても、誰も暴投しないし、動きがスムーズなのが分かったよ。やけにテレビゲームで強いわけだね。ポイントとしては、無駄に動いてないとか?」

父「やっと、頭で分かるようになったか。でもな、頭で分かるのは多くの人ができるんだけど、それを実際にプレーするのは難しいんだぞ。それができていれば、おとーさんなんかな……」

息子「はいはい、分かったから、昔話で泣かなくていいよ、もう。そう、このマスターズリーグはプロ野球のオフシーズンにやるから、年がら年中、プロの動きを見て勉強ができるね。じゃあ、次の 18 日の火曜日とか 1 月 2 日も来ようよ!」

父「あ〜、その日は忘年会だな。あとよ、 2 日は箱根駅伝でいいじゃん。正月は寝させてくれよ。ちなみに BS デジタルでは録画放送があるから、それでも見とけばいいって。」

息子「ちょっと、尊敬しちゃった、僕がバカでしたよ。。。」

めでたし、めでたし(?)

と、こんな風な親子にならずに、テレビではなく、ぜひ野球場へ足を運んで下さい。カメラでは切り取ることのできないエンターテイメントがそこには詰まっております。親子だけではなく、祖父母、孫を組み合わせた 3 世代をもつなぎ合わせてくれる。球場はドームになっていても、お客さんの雰囲気は昔の北九州市民球場や川崎球場を思い出させてくれる。「温故知新」。今年のマスターズリーグのテーマでありますが、観戦をしていて本当にこの言葉がぴったりと当てはまりました。忘れ物を取りに帰る機会はこんなところにもあったものです。

 西山 裕貴

【参考リンク】

プロ野球マスターズリーグ HP


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