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いつか、どうにかこの人にインタビューしたいと思っていた。彼のテレビ界での黄金期をリアルタイムで知っているわけではないけれど、大御所だということは知っている。華やかな世界でそういわれている人が、なぜ私財を投げ打ってまで野球に打ち込んでいるのだろう?きっと、何か自分の知らないことを知っているに違いない―
「野球界を変えたいとか、そういうつもり、ない。 魅せたい 。」
これが、彼が私財を投げ打ってまで球団を持つ理由だ。事は単純じゃない。話を聞いていくにつれ実感した。それは本当に野球に魅せられていて、且つちゃんと魅せ方を考えている人でなければ、できないことだから。
そんな萩本欽一氏(以下、欽督)のイズムを注入された茨城ゴールデンゴールズは、今年の日本クラブ野球選手権で見事優勝を果たした。でもそれ以前に欽督は「僕はゴールデンゴールズが一番幸せなチームだと思う」と話す。
欽 :ゴールデンゴールズは粋なやじが多いですよ。だって負けたときも『欽ちゃ?ん、ありがとう』って帰りますから。僕はゴールデンゴールズが一番幸せなチームだと思うの。お客さんは野球が9回で終わりなんて思ってないですから。一番僕が好きなエピソードは、僕はみんな帰るまで球場でお客さんと喋ってるわけ。そうしたら最後にお客さんがご夫婦だけになっちゃったの。そうなるまでには1時間半くらい経ってたね。『お父さんお母さんまだ帰んないの?』って言うと、『最後まで付き合えたのが、なん〜とも楽しかった』って。それで最後には「じゃあ、一緒に出ようか」って言って一緒に球場出たんですよ。
だからって、僕はプロ野球の選手に是非そうやって下さいとは言わないよ。それはしない方が良い。そういうことは、する人が1人いればいい。皆がやるんなら皆疲れるもん。プロでやるようだったら僕はやんない。だから僕はサインとかじゃないファンサービスでもいいと思うよ。選手は一生懸命プレーすればいいんですよ。
僕がプレーで最初に怒ったのは、選手が欽ちゃん走りしたんで、『野球はまじめにやれ。野球に失礼だろ。冗談でプレーするんじゃない。冗談やっていいのは俺だけだ』って言った。僕が冗談やって選手も冗談やったんじゃ観てる人、面白くないし。今年優勝したのも、言ってみれば僕が優勝したわけじゃないからね。僕は面白いだけ徹底してたんで。チーム一丸となって優勝したんじゃなくて、選手が一丸となって優勝したんだよね(笑)選手には勝負にこだわらせて、僕だけ面白さにこだわって、それがうまくマッチして優勝できた。
今年4月30日、千葉県四街道市にある小さな市民球場には猛暑の中、 5000 人もの観客が詰め掛けていた。私の後ろに座っていた元高校球児を持つらしい主婦2人が帰り際にポツリと言った言葉が忘れられない。
「こういう野球も、いいねぇ」
あの主婦は、このゴールデンゴールズの試合を観なかったら、きっとずっとそんな野球に気づくこともなかったのではないだろうか。
では、チーム内の人たちは、欽督の野球に対するこのようなイズムをどのように感じているのだろう?今回はゴールデンゴールズでコーチを務めている元西武ライオンズ・松沼博久氏(以下、 松 )にもお話を伺った。
松 :今のうちの野球は、ただお客さんがじっと野球を見るだけでなく、欽ちゃんとお客さんが話をしていくわけですよ。プロ野球の人って、最近は話すようにはなりましたけど、昔の選手って喋らない人が多かったんです。でもうちのチームではそれは通用しないんです。試合の時、先発の選手が一言言ってから守備位置につくんですけど、それって大変だと思うんですよ。野球人って本来おしゃべりな人はあまりいないので、話の勉強もしながら練習もして大変だと思うんです。けど、それって私生活にも役に立つじゃないですか。そういう意味で職に就いてもしっかり話をしてくれていると思いますね。話って難しいでしょ?特に人に伝えるとかっていう部分では。だから我々は教育も一緒にやっているんです。
??? ゴールデンゴールズが野球自体の発展に寄与されているという実感はありますか?
すごくありますね。宮崎のキャンプに行ったときも、朝選手も来てないうちから、おじいちゃんおばあちゃんたちが待ってくれているわけですよ。で、欽督が来て話し始めると皆喜んで。それだけ影響力もありますし、試合よりも欽ちゃんっていうお客さんも確かに多いんだけど、次第に野球も観るようになるんですね。お年寄りとかでも、野球と欽督の話と両方楽しむようになって、皆さん満足して帰られますね。
野球だけじゃなくて球場に来て良かったなと言ってくれるお客さんが、うちの場合は凄く多いんです。僕らも期待に応えなくちゃというのはありますね。いくら欽督が面白いこと言っても、選手がグラウンドで下手くそじゃ駄目なんですよ。良い試合をやった上での欽督のトーク、そのへんはしっかりやっていきたいと思っています。
それに、やっぱりこれだけクラブチームが増えてきているっていうことは、欽督の影響でクラブチームを見る目が変わってきていると思うんですよ。例えば欽ちゃんのチームと対戦したいという目標を持って一生懸命やる人もいると思います。だから我々も試合するときは、点差が開いても一生懸命やるわけです。だからクラブチームはこれから面白いと思いますよ。一回試合を観てみると病み付きになると思います。
ところで、欽督は観客を楽しませるだけの仕事をしているわけではない。野球というスポーツの面白さを最大限引き出しながら、ちゃんと采配を振るっている。その力は元プロも認めるほど。
欽督術
欽 :僕が監督やるとき選手に言ったのは、『まずピッチャーだけど専門的でわからん。だからコーチ入れといたから好きにやって。後バッターはサインとか頭痛そうだね。サインは自分でやって』って。監督がサイン出して失敗すると選手と仲が悪くなるんだから、自分で出したらだれも気持ち悪くならないだろって。僕は1番と2番、2番と3番をつなげるだけが仕事。監督だから運を探すの。だからバッターも打てないんじゃない。たまたま打って欲しいところにその選手を入れ損なっただけで、それは監督の責任だから。そうすると気が楽ですよ。奇跡を起こそうとするときは、自分で起こそうったって起きない。そうでしょ?2アウト満塁にするっていうのは監督の仕事。その次のバッターを決めるのも監督の仕事。
松 :簡単に言えば、いくらいいバッターでも3割ちょっと、10回やったら3回しか成功しないんですね。だから、その3回をどこに集めるかによって得点機が変わります。そこでうまく運のある選手をはめ込むことが大事になるんです。だから欽督が『この選手は3打席目に打つよ!』と言うと、僕らは1、2打席目は我慢しなくちゃいけないんですね。そうすると最初の2打席は打たないんで、「代えたいなー」と思うんですけど、3打席目にはいい当たり打つんですよ。もちろん運も実力のうちですから、僕らコーチが一生懸命練習させて、運のあるように持っていかなくちゃいけないわけです。
ただ、僕は守りを重視しているので、欽ちゃんが使うと言っても守備が下手だと僕は使いませんと言います。そこで攻撃と守備のバランスがうまくとれるようにはしています。それが今年はうまくはまったので優勝しちゃったんです。うちの選手はそれをよく理解しているんで、今日は4番だけど明日は出てないというのにも慣れているんです。
非科学的と言われればそうかもしれないけど、野球って確率なんですね。打率や防御率といった中で、1番良い率を探して組み合わせています。僕は長年プロ野球にいましたけど、とても面白い考えだと思います。
今年はそれがうまくいって優勝できたと思っているんですが、その勝った要因に欽督の運の転がし方がかなりありましたね。負けそうになったゲームでも、試合直前に欽督が8番と2番を、『これは変えよう』って言って変えたんです。そしたら8番が、2アウト満塁で9回の表に、走者一掃の3ベースを打って同点に追いついちゃったんですよ。試合直前に打順を入れ替えてなければ、負けてたかなとは思います。
次回は、野球にこだわるその理由と、欽ちゃん流野球の楽しみ方を存分にお伝えいたします!乞うご期待☆
【参考リンク】
茨城ゴールデンゴールズ
小池 絵里花 |