SEEDS-net vol.95
2008年01月29日発行
 
 読者の皆様、寒い毎日が続いていますが、いかがお過ごしでしょうか?東京でもこの間雪が降りました。子どもの頃は雪が降るとそれだけでテンションが上がっていましたが、もう今はそんなこともなくなりました。雪、寒いですし、今の私はそんなに好きじゃないですね。子どもの頃の純粋な気持ちを失ってしまったのかな、とそんなことを考えたこの間の雪でした。
  さて、 SEEDS-net も今号で第 95 号となりました。 100 号まであと少し。全力でこの冬を乗り切って 100 号まで突っ走っていきたいと思います。それでは、 SEEDS-net vol.95 をどうぞ。(謙)

<もくじ>

マイレポート 俺たちの誇り
マイレポート スポーツと暴力
マイレコメン 風が強く吹いている

++ マイレポート ++  俺たちの誇り
   1 月14日付の日刊スポーツ にこんな写真が載っているのを見つけた。
 「大榎監督(中央)の顔入りTシャツを着て歓喜する優勝した早大の選手たち」。
 
  このTシャツを作って渡したのは、“俺たち”なんだよ。
  写っている選手たちの歓喜の表情を見て、俺は恥ずかしながらも、少し誇らしく感じた。
 
 
 ――早稲田大学ア式蹴球部には、不思議な伝統がある。「部員は応援歌を歌わない」。学生チームで最後に天皇杯を制し、多くの日本サッカーへの貢献者を輩出する古豪ワセダのルールだ。しかし、古豪は沈んでいた。後に大学生ながらアテネ五輪代表となる徳永悠平(現・FC東京)を擁していたにも関わらず、関東3部にあたる東京都リーグにいたのである。名門が沈んでいたから、「古豪」。それが、2003年のことだった。
 
  Jリーグが開幕してから10年が経ち、サポーター文化はどんどん大きく広がっていった。「サッカー好き」とは経験者だけでなく、「観戦者」が増えていく。そうしたサポーターが集まる観戦サークルがあった。ちょうどその頃の大学サッカーは、現日本代表の巻誠一郎が駒澤大学で活躍していた頃だ。駒澤での巻の活躍を見ながら、観戦サークルの一人はこう自問する。
 
 「なぜ早稲田の試合を観ない?」
 
  その答えを彼は、サークルの仲間を引きつれ、行動で示す。早慶戦からバックスタンドでいわゆる「サポータースタイル」の応援を始めたのだ。しかし、入れ替え戦で早稲田は関東リーグへの昇格を逃した。
  その翌年、ア式蹴球部サポーター集団「 ULTRAS WASEDA (以下 UW )」が正式に発足する。先述のサッカー観戦会にとどまらず、さまざまな人が応援に集まり始めた。早大生にとどまらず、他大生や高校生のサポーターも集まった。ちなみに、2代目のコールリーダーは東洋大生だったりする。
 
 UW が発足すると、早稲田は毎年戦うステージをステップアップさせていった関東2部リーグへ昇格、翌年には総理大臣杯(夏に行われる全国大会)準優勝。そして2006年、とうとう早稲田は関東1部リーグに帰ってくる。久しぶりの1部は5位に終わるが、シーズンの最後を彩る全日本大学選手権(インカレ)を決勝まで勝ち上がってきた。数年前まで3部に沈んでいた古豪が、ついにタイトルを獲って「復活」を成し遂げるか。そう意気込む早稲田に立ちはだかったのが、駒澤大学だった。1−6で圧倒的な差を見せつけられての敗戦である。
 
  2007年シーズンのスタートは、その屈辱から始まった。大榎克己監督のパスサッカーは、監督就任と同時に入学した4年生とともに完成に近づいていた。ユース代表で10番を背負った兵藤慎剛キャプテンを筆頭に、1月26日現在で5人の J リーグ内定者がピッチを駆ける「黄金世代」である。大混戦の1部リーグは惜しくも2位になったが、圧倒的な攻撃力を見せつける。
 
  インカレでも4連覇のかかっていた宿敵駒澤を準決勝で退け、決勝では6人の J リーグ入り内定者を誇る法政大との緊迫した一戦を制し、見事「日本一」に輝いた。その表彰式のあとの様子が、冒頭の写真だった。「この一戦は絶対に勝つ」と信じて用意していた、監督の顔と登録メンバー全員分の名前をプリントしたシャツを、優勝後に手渡したのだ――。
 
 

 
  俺がUWの活動に参加し始めたのは2005年だから、まだ都リーグだった頃を知らない。今では人工芝だが、まだ当時は東伏見のグラウンドは土だったらしい。4年生はそんな都リーグの頃から日本一まで知っている。それは、発足当時から活動していたUWのOBたちも同じ。選手から表彰状を手渡され、高く掲げる。選手もサポーターも関係なく、感涙だ。
 
  まさに、「“俺たち”がワセダ」。
 
  サッカーに限らず、早稲田のスポーツは強くなった。佑ちゃんの野球、竹澤の駅伝、五郎丸のラグビー。なのに、スポーツ科学部が所沢や東伏見にあるせいか、キャンパス内での「一体感」はあまり感じない。強いやつらがやっているから強いのは当たり前だ。そう醒めた目で見られてもおかしくはない。
 
  サッカーだって、うまい選手はたくさんいる。そして、サポーターがいる。正直に言って、結果に貢献しているのかはわからない。でも、一緒に勝つ喜びを味わうことができる。普段あまり会話をすることはなくても、歌えば選手は踊って喜んでくれるのだ。なんだか、そういうことって、なんだか忘れられてはいないか。
 
  発足時のメンバーがだんだんと抜けていって、UWは少しさみしい人数になってきている。このまま部員以外が味わえなくなるのはやっぱりさみしい。発足メンバーではない俺ですら、こう思う。
 
  3年の俺は来年で卒業する予定だけれど、それまでにひとりでもこの喜びを多く分かち合いたい。サッカー好きはたくさんいるだろう。Jもいい。海外もすごい。でも、大学4年間しか味わえないサッカーの喜びが、ここにはある。同じ大学で学ぶ仲間が戦う勇姿、ぜひ一度見に来ることは決して悪いことではないはずだ。
 
 そしてスタンドには、変な応援歌を歌っている集団がいる。そんなやつらがいるということも少しは覚えておいてくれたら、うれしく感じるやつらも、いるのかもしれない。
 
 

 
 文:伊藤 祐己
 写真:篠 雄也、伊藤 祐己
 
 【参考リンク】
 早稲田大学ア式蹴球部
ULTRAS WASEDA

++ マイレポート ++  スポーツと暴力
時として競技者は暴力に及ぶ。それはラフプレーに対する報復であったり、納得のいかない判定に対するものであったり、不甲斐無い味方選手を叱責するためであったりする。 2006 年にドイツで開催された FIFA WORLD CUP 決勝における「ジダン頭突き事件」が記憶に新しいところだ。それ以外でも、暴力行為、およびそれに伴う退場などの厳しい処分はもはや日常茶飯事と言っても過言ではない。今日は、前述の「ジダン頭突き事件」を題材にスポーツ選手の競技中の暴力について考えてみようと思う。
 
 では、ここで事件をおさらいしてみよう。フランス対イタリアの決勝戦の延長後半 5 分、フランスのジダン選手がイタリアのマテラッツィ選手の胸部に頭突きした。それを確認した第 4 審判が主審に報告し、ジダン選手は退場処分となった。この事件の背景事情にあったのが、マテラッツィ選手の暴言とされている。この試合、ジダン選手のマークを任されたマテラッツィ選手は試合中ジダン選手を執拗なほどにマークし、度々罵りあいをしていた。事件直前、ジダン選手のユニフォームを掴みマークしていたマテラッツィ選手に対してジダン選手が「そんなにユニフォームが欲しいのなら試合後にやる」といったような発言をし、それに対してマテラッツィ選手が悪質な暴言を吐き、それに怒りの収まらなくなったジダン選手が暴力行為に及んだ、とされている。この後、暴力行為に及んだジダン選手に 3 試合の出場停止と約 70 万円の罰金、暴言を吐いたことを自供したマテラッツィ選手に 2 試合の出場停止と約 40 万円の罰金が科せられた。
 
 この事件はスポーツ選手の暴力やモラルに関して世界中を巻き込んだ大きな論争を巻き起こした。その論争には大きく分けて4つのスタンスがあった。
 
 • ○ジダン ×マテラッツィ
 ジダンが怒るなんて・・・
 人種差別発言は・・・
 • ×ジダン ○マテラッツィ
 試合中の暴言はしょうがない
 マテラッツィがけがしたらどうするの?
 • ×ジダン ×マテラッツィ
 どんな暴力も許されるわけがない
 • ×審判
 審判空気読め!!!
 
 
 あなたはどう考えますか?
 
 僕は、Bの意見を推す。サッカーが世界に誇る文化なのだとしたら、いかなる暴力も存在してはいけないからである。現代のモラルは、「他人を傷つけない」ということをベースにしている。無形財に暴力が在っては、それは文化になり得ない。世界中の人々がそれぞれに楽しめる素晴らしい文化となるためには暴力を排除するべきだ。
 
 無宗教化に伴いモラルの根拠は不明瞭になっている。だから、現代ではモラルについての法整備が進んでいる。そこで生まれた新しいモラル観が「法を犯さないこと」だ。暴力行為を日本国の法令に当てはめると・・・
 
 刑法 208 条 暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、二年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
 
あなたはどう考えますか?


田中 望

++ マイレコメン ++  風が強く吹いている
  次の箱根駅伝まであと 339 日。うーん、もう待ちきれない!
 
  私は自他共に認める箱根駅伝好きである。今年も例年のように箱根へと足を運び、箱根の山を駆ける選手たちに声援を送ってきた。今年の箱根駅伝は例年以上に面白かった。駒澤大学の総合優勝で幕を閉じた今回の箱根。我らが早稲田大学も往路優勝、総合 2 位と見事に古豪復活を果たした。他にも、史上初となる 3 校の途中棄権や、 3 区間で新たな区間記録が樹立されるなど、今大会も様々なドラマが詰まった素晴らしい大会だった。
 箱根駅伝が持つ独特のドラマ性。箱根駅伝は一学生スポーツでありながら、スポーツの枠を超えたドラマのように感じる。
 
 私は箱根駅伝が好きだ。大会が終わってもしばらくは箱根駅伝の余韻に浸っている。正月ボケならぬ箱根ボケに今年も悩まされた。そして、この余韻から抜けると、もう来年の箱根が待ちきれなくなる。次の箱根駅伝まであと 339 日。
 
 ここで 1 冊の本を紹介したい。一昨年に発刊され、結構な反響を集めていたように記憶しているから、ご存知の方もいるかと思うが、三浦しをん著『風が強く吹いている』だ。
 
 

 
 箱根駅伝を題材とした青春物語。素人集団が必死に練習をして箱根駅伝を目指すというベタといえばベタな内容だが、とにかく「きれい」な作品だった。先が読みたくてどんどん読み進めた。分厚い本だが一気に読んでしまった。途中何回も涙した。
 
  ―――才能に恵まれ、走ることを愛しながら走ることから見放されかけていた清瀬灰二と蔵原走。奇跡のような出会いから、二人は無謀にも陸上とかけ離れていた者と箱根駅伝に挑む。たった 10 人で。それぞれの「頂点」を目指して……。(本書帯より抜粋)
 
 メンバー 10 人の一人一人にドラマがあり、それぞれがそれぞれの「走る」意味を追い求める。この物語には箱根駅伝のドラマ全てが詰まっている。今年の箱根駅伝の記憶が残っているうちにまず 1 回読んで、また次の箱根駅伝の直前にもう 1 回読むことをおすすめしたい作品。読めばきっと爽快な気分になれる。
 
 箱根駅伝が待ちきれないあなたに、もう一つの箱根駅伝をどうぞ。是非!
 
 山城 謙


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